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2016.9月配信コラム 地域と仕組みを考える、これからの木質バイオマス

2016.8月配信コラム 食の環境が問われる、東京オリンピックのGAP認証

2016.7月配信コラム 自動運転の勝機はコンテンツに?

2016.6月配信コラム

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【第2回】水素社会のシナリオから、チャンスを探る
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水素社会のシナリオから、チャンスを探る

次世代エネルギーの水素が今年、さらに普及の加速度を増した。水素利用技術の試験研究を行ってきたHySUT=水素供給・利用技術研究組合は、今年4月に一般社団法人化。またホンダの新型FCVはじめ、さまざまな水素関連事業がこの春頃から連日報道されている。今後、水素社会の実現に向けてどのようにビジネスは進化していくのか? 水素社会の普及シナリオからビジネスチャンスを探ってみたい。

2050年に1600万台は実現するか?

水素で走るクルマ、FCVは、使用時にCO2を出さないクリーンさや、水を電気分解することで取り出せるほぼ無限のエネルギー源であることから、未来の選択肢として注目されている。日本でも2050年には1600万台を目指すと、水素社会におけるFCV普及のハイシナリオが発表された。大幅な技術進展を望んだ場合には、全国展開により、日本のあちこちでクリーンなFCVが走り、私たちはガソリンスタンドの代わりに水素ステーションで水素を購入し、CO2を排出しないクリーンドライブを楽しむ未来が訪れるかもしれない。しかし消極的な「ベースシナリオ」の場合は半減し、800万台にまで落ちこむ。燃料電池実用化推進協議会のこの「FCVと水素ステーションの普及に向けたシナリオ」では、2050年の温室効果ガス排出量の80%削減目標に貢献するべくFCV普及台数の設定を行っているという。シナリオのゆくえは、日本の技術革新にかかっている。FCV先進国である日本が、もし本気で水素社会の実現に取り組むなら、世界をリードした環境技術によってビジネスチャンスを生むだろう。

水素社会の課題は、コスト。

しかし現段階では、開発費用やインフラ整備などにかかる莫大なコストが普及の壁となっている。現在、100箇所を目指した商用水素ステーションの整備が4大都市圏とそれらをつなぐ高速道路沿いにすすめられている。また2020年代後半には、平均FCV900台に対応する水素ステーションの自立
的運営を目指すという。前出のHySUTでは、今年4月から水素ステーション設置、普及のための補助金公募を開始したが「水素ステーションの設置には約5億円ものコストがかかると言われています。補助金を活用したとしても、2億円程度は自己負担することになります。一方で、水素ステーションの利用数は1日1ケタ程度。現段階では中小企業の方々からの投資は考えておりません。現段階では補助金事業による水素ステーションの明確な目標数は設定しておりません」(HySUT 情報紹介部シニアマネージャー 柴田氏)
HySUT担当者のややトーンダウンした回答からは、現時点での課題が透けて見える。水素ステーションの設置にかかるコストと採算の問題、そしてFCVの開発コスト。販売価格などもまだまだ一般的とはいえない。しかしコストの壁を破るのは、技術力ではないか? と思える明るいニュースも連日発表されている。

日本の技術力が普及のカギに

ホンダは、独自に開発した高圧水電解システム「Power Creator」を採用したパッケージ型「スマート水素ステーション(以下、SHS)」を、Honda青山本社ビルに都内の商業地域として初めて設置、公開している。このSHSは、設置面積が従来の1/20~1/30 、設置コストは1/10程度というもの。トラックで運べ、1日あれば設置できる。水素製造に必要な電力をまかなうため、太陽光発電システムも導入している。
また、先日取材した横浜市内のある環境企業では、窒素ガス発生装置の技術を転用し、水素ステーションに燃料電池を設置し、FCVに対する水素ガスの供給だけではなく、燃料電池から得られる電力を売電したり、燃料電池より排出される窒素ガスも応用するという新たな水素ステーション構想を描き、すでに来るべき水素社会に備えて特許取得したという。
「中小企業にとって、未来の水素社会はビジネスチャンスです。でも、普及してからでは遅い。普及の前にいち早く他社が真似できない技術を確立しておくことが我々中小企業の生きる道」と同社社長。自社の強みを未来のために。水素社会の実現に向けて、中小企業のチャレンジにも期待がかかる。

(一般社団法人スマート・ウィメンズ・コミュニティ 代表理事 東みちよ)