(fm yokohama keep green & blue より転載)logo2今年6月にスタートし、月1回のペースで開催している「ヨコハマ ブルーカーボン アカデミー セミナー」。5回目となる10月31日の回は、「環境にやさしい社会を創るために必要なこと~新しい水上交通システムと市民の海への関わり方~」をテーマに実施されました。会場は東京都千代田区の三菱総合研究所です。

この日の講師は、ともに東京海洋大学准教授の清水悦郎さんと川名優孝さん。まずはお二人がそれぞれのテーマでプレゼンテーションを行いました。

■清水さんと川名さんのプレゼンテーション

 清水さんは東京海洋大学で制御工学やロボット工学を専門とされていて、現在の主な研究テーマには水中ロボット「江戸っ子1号」の開発や次世代水上交通システムの開発があります。江戸っ子1号プロジェクトは東京下町の中小企業、いわゆる町工場が連携して深海探査機の開発を目指す企画で、この探査機にはリチウムポリマーの電池バッテリーが用いられています。スライドには、実際に江戸っ子1号によって撮影された深海での映像や写真の紹介もありました。

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江戸っ子1号 JAMSTEC HPより

清水さんがもう一つ紹介したのが、急速充電対応型の電池推進船というものです。電気自動車の技術を船にも応用できないかと研究が始まったもので、低騒音や低振動、そして電池だけで航行する際には排気ガスを発生しないという所に大きな特徴があります。

実際には電池のみで航行するには距離が短くなってしまい、水上での立ち往生というリスクが高いため、ディーゼル発電機を積んだハイブリッド電池推進船というものが開発されています。また、沖縄県石垣市において電池推進船が観光船として運航開始されていることなども触れられていました。

その他、次世代の水上交通システムとして研究が進められているのは遠隔・無人操船技術の開発や管制システムの開発、燃料電池推進システムの開発などです。電池で船を走らせる場合、清水さんたちの開発した「らいちょうN」というハイブリッド電池推進船では12ノットの速さで約50分(約20km)しか航行することが出来ません。ただ、これを6ノットの速度に抑えると8時間以上(約100km)も航行出来るのだそうです。

まとめとして、脱温暖化のためには更なる省エネルギー化や低炭素社会の実現が必要で、太陽光や風力などの不安定な電源も多いため、適材適所で少ないエネルギーでも上手に利用出来る方法を構築していくことが重要だと清水さんは指摘していました。

 続いて登壇した川名さんは、前回までのセミナーのおさらいも踏まえた海のお話を展開。地球上の水の循環メカニズムや海の環境およびエコシステム、そしてブルーカーボンや海洋教育についても語られていました。

例えば、汚れた海水を再び魚がすめるようにするためにどれくらいの量の水が必要かというクイズの出題も。しょうゆ大さじ1杯の汚れに対して風呂桶2杯分(400リットル)が、てんぷら油500ミリリットルの汚れに対しては風呂桶840杯分(168キロリットル)もの水で薄めなければならないのだそうです。

海洋教育についてのお話では、なぜ日本では海洋教育が十分に行われないのかについても言及。評価項目が確立されていないことや教育効果に時間がかかること、成果が分かりにくいことなどの課題を指摘し、市民による海洋教育の展開例としてヨコハマ海洋市民大学の取り組みについても紹介されていました。

■パネルディスカッションと質疑応答、まとめ

お二人のプレゼンテーションの後には、進行役として東みちよさん(一般社団法人スマート・ウィメンズ・コミュニティ代表)も加わってのパネルディスカッションが今回も行われました。

水上交通の今後の活用可能性について、あるいは電気自動車や燃料電池車などの技術の応用可能性について、清水さんは「開発した技術の普及のためにも、市民の方への理解、教育という部分にも力を入れていかなければならない」と話し、川名さんも「教育といっても楽しくないとダメですよね。ヨコハマ海洋市民大学ではエデュケーションとエンターテインメントを合わせた『エデュテインメント』という言葉を掲げています」と説明。参加者からは、海に関連して潮流発電に関する質問もありました。

最後のまとめでは、「教育というとおこがましいのですが、やはり理解してくださる方を増やしていくことが必要で、そのためには皆さんのご協力という点で今日のお話でいいなと思った点はぜひ広めて頂き仲間を増やしていければ、ブルーカーボンでつながっていくこともあるのかなと思います」と清水さんが呼びかけ、「例えば先ほどの電池推進船を横浜に浮かべて走らせると、高くて遅いというネガティブな面もあるかもしれない。それでも昔とは考え方や価値観が違う世の中になってきているので、そういった意味で理解してくださる方を一人でも増やしていけるような活動が出来れば」と川名さんも話していました。

(Keep Green & Blue Web編集部)